インタビュー

ハナレグミとフジファブリックによる「ハナレフジ」。ファーストツアー「ハナレフジ LIVE TOUR“宝船”~僕らはすでに持ちあわせている~」が10月4日より始まり、全国5ヶ所6公演を周る。それに先立ち、4人に改めて出逢いや、このツアーに至るまでの流れを教えてもらった。いかんせん、全員の記憶が曖昧な部分もあったが(笑)、ただ現在全員にとって「ハナレフジ」が単なる企画ユニットではなく、完全なるバンドである事は充分に伝わってきた。まずは、このインタビューを読んで頂き、何よりもツアーを楽しみに待って頂きたい。

―改めて、初めて逢ったのは、いつ頃ですか?
永積 崇 (以下、永積)「最初は東芝EMIで一緒だったんだよね」

―所属レコード会社が一緒だったんですね。
山内総一郎(以下、山内)「そうそう、EMIで先輩後輩。もちろん俺らは(永積の事を)知っていたし、もうハナレグミもやってた。SUPER BUTTER DOGは解散していないけど、活動休止していたのかな?」
永積」「それくらいかもね

―大体、14年くらい前ですよね?
永積「そうですね。こっちも(フジファブリックを)知っていたし、PVもスペースシャワーTVとかで、よく見てた。てか、昔の記憶だから、もう思い出すのは無理だよ(笑)」
山内「ライブで御一緒させていただいたり、普通に逢ったりもしてるんですけど、靄がかかりすぎて(笑)。レキシも一緒だったのかな?!」
永積「『スペ中』(『熱血!スペシャ中学』(‘03年4月~’06年3月スペースシャワーTV放送)の企画ライブだったのかな??」
加藤慎一(以下、加藤)「その前に野外のライブに行ってるね」
金澤ダイスケ(以下、金澤)「行った!」
山内「SUPER BUTTER DOG?」
加藤「いや、ハナレグミ」
山内「小金井公園かな?!」
永積「’05年だね(フリーライヴ『hanauta-fes.』)」
山内「こんなデカいところでやるんだと思ったな。それも雨が降っていたし」
永積「無料ライブだったんだよね」
山内「むちゃくちゃ良いライブだったな」
金澤「でも、当時から(永積は)全く変わらないよね。ステージ上と普段も全く変わらない」
山内「変わらないよね~。ずっとギターを弾いて、ずっと歌ってる感じ。『総君、ギター弾こうよ!』とギター弾きながらくる感じ」
金澤「そうそう、ずっとライブをやってる感じだよね」
永積「今すぐでもライブ出来るから! 基本、昔の事は忘れちゃうし、覚えていないけど『フジフジ富士Q』(‘10年7月フジファブリック主催による富士急ハイランドでの野外イベント)の印象は凄くあるかな。会場のお客さんの空気も良かったし、フジファブリックの『ルーティーン』を歌ったけど、自分の曲かなぁと思うくらいだった」
山内「志村(正彦/'09年12月逝去)君への追悼の意があるからこそ、ガチガチになってしまって、トチッたらアカンと…、志村君に怒られたらアカンと思いすぎていたけど、永積君は見事なボーカルで音楽が心地よかった」


―15組のミュージシャンが基本2曲フジの曲を歌っては交代していくというイベントでしたよね。
永積「フジファブリックはね、独特の音を鳴らすブッ飛んでる人たちなんですよ。僕に限らず、この3人をバックに歌うと、自然にフジファブリックの歌に馴染む。誰が歌ってもフジファブリックになるという…、それこそバンド。だから、ボーカリストとしてやるべき事が明確なんだよ。めちゃくちゃ歌いやすいしね」
金澤「確かに『ルーティーン』は今ハナレフジでやってるのは、ある種、必然だよね」
加藤「演奏しながら、『いい歌だな~』って思ったから」
金澤「演奏しているのに、お客さんになるよね(笑)。で、『イカン!イカン!』と!」
山内「『フジフジ富士Q』の時はバンドとして先が見えてなかったけど、本格的に3人で動き出して、去年の7月に『フジフレンドパーク』に来てもらったんだよね」

―友達と対バンをしていこうという企画ですよね。
山内「そうなんですけど、『友達って誰だ?!』となって、本当は先輩ですけど(笑)、出てもらいました。で、一緒に演奏もやったんですよ」
永積「3人の演奏が凄い上手いので、色々な人のバックをやったらボーカルがイキイキできるコラボになるのはわかっていたんですけど、改めて自分がやってみたら、自分の想像しない音が聴こえて熱くなったんですよね」
山内「永積君の歌に触発されて、僕らの演奏も変わるんですよ。ボーカリストとしてもミュージシャンとしても刺激になるので、ついつい永積君の方を観てしまうんです。横で観てて、『そんなギター弾いてるのに、ちゃんと歌えるんだ!』と驚いたりして(笑)。尊敬しています」
金澤「自分たちが演奏しているのに、フジファブリックとハナレフジは全然違うんです。呼吸ひとつで変わる。しっかりと空気を感じていないと出来ないし、刺激的ですよね」
永積「リハの時からダイちゃん、そう言ってくれていたね。一番大事な事を気にしてくれてるのが嬉しい。本当にアンサンブルが好きな人たちなんだなって思ってる」


―一緒に演奏された時の楽曲は、どうやって決められたのですか?
山内「まずは、候補曲を頂きましたね」
金澤「メドレーなんかもあったんですけど、永積君は繋ぎが上手いですね。DJ的感覚というか」
永積「ライブ終わってからの打ち上げで『1回だけではもったいない!』と盛り上がったよね。単なるバックバンドでも単なるサポートバンドとも違って、ちゃんとプッシュされるというか」
山内「塊やからね」
永積「パンチ力が出るんだよね。バンドは大砲だから。ハナレフジだと、よりぶっこめる。突然起こる熱い瞬間…、バンドマジックがあるんだけど、それはSUPER BUTTER DOGを思い出すんだよね。後、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とやった時も思い出したな」
山内「あっ、わかる! ウチらもスカパラとやった時、また普段とは違う塊の感じがあった。自分らの曲を料理してもらって嬉しくなっちゃう感じ!」
永積「はしゃいじゃうよね!」
金澤「『お前ら~!!』と(お客さんに)言いたくなる熱量になるよね! 塊になれるのは良い事ですよ」
加藤「大体みんなに言われちゃったんですけど(笑)、呼吸や空気を共有する感じは嬉しいですね」

―去年末には大阪のフェス「RADIO CRAZY」にも出演されましたよね。
山内「『今年もお疲れ様! ドーン!!』と出来たらいいなって」
永積「『あれもやりたい! これもやりたい!』ってなったよね!」
金澤「2バンド分やりたい事あるわけだからね」
山内「2バンド分という事で時間も長めにもらって、盛りだくさん出来たね」
永積「まず、思いつく事をやろうっていう感じだったね。すぐにまとめちゃうのはもったいないし、ライブで演奏しながら気付く事が多いし、お客さんの前で進化する事も多いから」


―そして、遂にツアーになりますが、今はどんな状況ですか?
永積「メンバーだけでリハに入ってますね。まぁ、ツアーはビシッとしたMCをやりたいね! 卒業式みたいな(笑)」
山内「卒業式のって、ひとりずつ言うやつ?! あれこそ呼吸を合わせるのが大切だし、凄い塊感が出るよ!」
永積「(笑)。でも、ツアー前の去年末に1回やれたのは良かったね。間を空けると空気感を忘れるから。今までも月1、2回くらいは集まってるよね」
山内「永積さんのスタジオで、ご飯食べながらね(笑)」
永積「スナック菓子とかも食べながらね(笑)。それでツアータイトルも決まったもんね。楽しかったな~。もう、バンドだよね~」
山内「ずっと冗談みたいな事を言い合っていたよね!」

―ちなみに、どんなタイトル案が出ましたか?
永積「『ピカソ』?!」
金澤「(笑)。後、何も付けなくていいんじゃないとかね」
山内「『ハナレフジ2018』みたいなね」
永積「で、『いいねぇ~』とか言ってたら、総君がドラムを叩きながら『宝船!』と言い出して、色がたくさんある感じがするし良いんじゃないかなって! 方向性とかより、ムード熱量が見えればいいので。船だから動いている感じもするしね。ビビッと来たし、この人凄いなって!!」
山内「あのスタジオの空気感だからこそ、出たタイトルですよ。音出しながら、喋りながらね」
永積「木々が多い住宅街にあって、空気感が良いからね。日曜日の友達ん家みたいなね! 何か生まれるかもだし、何も生まれないかもだし、まぁ、生まれたらラッキーみたいな。お互い、今そういう空気感が必要なんだろうね。『コレだ!』ってなったら、形になるのめちゃくちゃ早いしね」
金澤「でも、宝船って派手な感じで良いよね」
山内「縁起も良いし」
金澤「普通、初めての時は宝探しに行くイメージなのに、宝船だと既に宝を持っているから(笑)」
永積「こなれてる感じが出てるよね(笑)」
山内「『何なら、宝物を分けましょか?!』みたいな!」
加藤「既に宝物を運ぶ方だからね(笑)」
永積「既に全て持ってるから!」
山内「トレジャーハンティングじゃないんだよね!」
永積「ツアータイトルは『宝船~僕らは既に持ち合わせています~』で、どう?!」


―こうやってツアータイトル決まるんですね(笑)。
山内「いつも、こんな感じですよ(笑)」
金澤「くだらないよね~! ホールツアーだったら、セットは船にしたいよね!」
山内「船首が前のタイプね!」

―(笑)。みんなで何だかんだ楽しく言い合いながら、色々出来上がっていくのは素敵ですよね。
永積「ひとつのお題に、みんなで何を出していくかという時間は、よりバンドになるために大事な時間だよね。特に先の事は何も考えてないし、単純にツアーで3人の演奏に刺激を受けたい。3人を見ていると喋ったり喋らなかったりという気の置けない感じなんだけど、そこに混ぜてもらってる感じですね。それで充分だし! 何をやっても面白いので、そこまでの時間も遊びながら味わいたい。もちろんお客さんの(ハナレフジへの)熱い気持ちもわかっているけど、今はお客さんに向けてというより、自分たちに向けてやっていいのかなって。だから、とことん鳴らしたい音を鳴らす。まず自分たちが思いっきり楽しんで、それをひとりでも多くの人が共感してくれたら嬉しい」
加藤「ひとりバンドに加わるだけで演奏は変わりますし、混じり合いも出てくるので、ツアーまでの過程もしっかりと味わいたいですね」
山内「そもそも既にあった曲からも何かを生み出そうとしているし、本当に音を生み出すのが好きな人たちが常にセッションをしている感じ。色々決めずに進む事で、新しい音楽は生まれるからね」
永積「もう生まれてるよ! 本当にバンドを感じてるね」
金澤「僕らもバンドだと思ってますよ」

―いい話をたくさん聴けました。バンド「ハナレフジ」のファーストツアーを本当に楽しみにしています。今日はありがとうございました!

(取材・文/鈴木淳史)